こんにちは。メタバース工学科担当教員のしゅんしゅんです。
突然ですが、『アート』と『デザイン』は何が違うと思いますか?
この問いは、ものづくりをする上でとても重要な問いなのです。
メタバース工学科の生徒に事あるごとに伝えていることなので、皆さんにも共有しますね。
これから説明することは、学問的な定義というよりは、長年ものづくりに携わってきた経験に基づく、私なりの考えですので注意してください。
『アート』とは
アートをする人=アーティストと聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?
音楽をする人もアーティストですし、絵を描く人・彫刻を彫る人もアーティストですね。
私はアーティストと聞いて、『自己を表現している人』だなと思っています。
自分の考え、想い、イメージを何かしらのカタチで世に出していく人。それがアーティストだと思っています。
自分を表現している人だから、全ての人に想いが伝わらなくてもよいし、共感してくれる人だけに伝わればよい。
そんなイメージを持っています。
ゴッホやゴーギャンなど昔の画家には、生前は全く評価されなかったのに死後評価された人も多いですね。生前評価されなかったかといって彼らが不幸だったのか?本当のことは本人にしかわかりませんが、生活が苦しかったり、表現方法に苦悩したりはしたものの、自分を表現することに没頭していたので充実した日々だったのではないかなと想像しています。
他人の評価よりも自己を表現することに重きを置いているのが『アート』だと考えています。
『デザイン』とは
逆にデザインはどうでしょう?
『デザイン』とはを考える前に『良いデザイン』についてまず考えてみましょう。
良いデザインは見た目がよいということではなく、使う人にとってわかりやすく・使いやすいデザインのことなんです。つまり、デザインされたものには必ず<使う人=利用者>がおり、デザインをする人=デザイナーは、利用者のことを思い、どのようなシーンで使うのか、どのような感情で使うのかなど相手のことを考えた上で、その人にとってベストな表現方法を選びます。
悪いデザインは利用者が使うときに使い方に迷ってしまうデザインです。
みなさんも押して開けると思った扉が実は横にスライドするタイプだったり、教室の電気のスイッチがどの電灯に対応しているかわからずにとりあえず手当たり次第にスイッチのオンオフをしたことはありませんか?
こういう使い方がわかりにくいデザインが悪いデザインです。
良いデザイン/悪いデザインの比較からわかるとおり『デザイン』とは他者(利用者)への思いやりの塊なんですよね。

アートとデザイン、どちらが重要?
では、アートとデザインのどちらが重要なのでしょうか?
優劣はありませんが、ものづくりをするという観点であれば『デザイン』が重要です。
例えば、メタバース空間(ワールド)を制作したとして、アートな心で自己を表現してわかる人だけわかってくれればよいというスタンスでは、せっかく作ったワールドに人が誰も来ず、寂しい空間になってしまいます。
デザイン的な観点で、
どのような人にどんな体験をしてもらい、どのような感情になってもらいたいのか
を考えてワールドをつくることで、来てくれた人が楽しめるワールドになり、多くの人が訪れるようになります。
デザイン的な観点を持つということは他のものづくりでも重要ですし、まだまだAIやロボットでは補完しきれない領域なので人間が活動する上での大切なことなんですよ。
コメント