1.メタバースってなに?
「メタバース」とは、一言でいうとインターネット上に広がる“もうひとつの3D世界”のことです。
- 現実世界でできること(友達とのおしゃべり、ショッピング、イベント参加など)が、バーチャル空間でも行える
- 自分自身の分身である「アバター」を使い、3Dの空間を自由に動き回れる
たとえば、ゲームのキャラクターを操作して誰かと一緒に冒険したり、ライブ会場に行ったりする感覚が、もっとリアルになったもの、とイメージすると分かりやすいかもしれません。
2.メタバースを構成する8つのポイント
実は、理想のメタバースには8つの大切な条件があります。これを全部クリアするにはまだ時間がかかりますが、今のうちから覚えておくと、将来どんな変化が待っているのかイメージしやすいですよ。

- 永続的に存在する
ゲームのリセットやポーズのようにプレイヤーが世界全体の時間を止めてしまったら「神」のような存在になってしまいます。メタバースにはそのような概念は存在してはいけず、現実世界と同様に体験が一続きになっている必要があります。 - リアルタイム性
リアルタイムに他者と同一体験を共有できるということは重要な条件です。 - 同時参加人数に制限がない
現実世界は物理的な制限があり、どんなに広いイベント会場でも定員があります。メタバースは現実を超えなくては意味がないという考え方もあります。そのため、同時参加人数に制限をなくすことを理想としています。
ただし技術的な制約で、この条件を満たすサービスはいまのところないのが現状です。 - 経済性がある
経済性とはバーチャル空間での買い物やビジネスが成立するということ。メタバースが持続的に発展していくためにも経済性は重要な条件になります。 - 体験に垣根がない
メタバースはデジタル世界(仮想世界)とフィジカルな世界(現実世界)をシームレスにつなぐし、プライベートとパブリックなネットワークおよび体験をまたぐ存在であるべき、という条件。この考え方には賛否両論あるので、長い時間軸のなかで変化するかもしれません。 - 相互運用性
異なるプラットフォーム同士でも問題なく接続し、運用できるという状態。アバターやアイテムをプラットフォーム間で自由に持ち運びできる状態を指します。こうなったら、メタバースは一気に発展すると思います。 - 幅広い企業・個人による貢献
企業や個人を問わず誰でも参加でき、何かを売ったりサービスを提供したりして、コンテンツがあふれている状態でないといけないという条件。 - 身体性
身体性とは身体感覚のこと。メタバースはディスプレイの向こう側にデジタル世界が広がっている状態ではなく、自分自身がデジタル世界の中に入り込み、その中に住んでしまっているという感覚が重要。
これらをすべて満たした究極のメタバースはまだありませんが、技術が進むにつれて、より理想に近い世界が作られていくと期待されています。
3.メタバースの歴史って?
「メタバース」と聞くと、最近急に注目された言葉のように思うかもしれません。実はメタバースという言葉ははじめて世に出たのは30年前に発刊されたSF小説「スノウ・クラッシュ」です。
その後、2003年には「セカンドライフ(Second Life)」というメタバースプラットフォームがリリースされました。当時は新しいサービスに熱狂が生まれましたが、ハードウェアやネットワークがそれほど発展していなかったため、動作が重く快適に利用できなかったためにすぐにすたれてしまいました(サービス自体はいまもあります)。
そして今、ハードウェアやネットワークなどの外部環境も整い、社会構造も変化してきているため、メタバースの波が徐々に訪れています。

4.ゲームとメタバースの違い
中高生のみなさんにとって、メタバースは「オンラインゲームみたいなもの?」という印象が強いかもしれません。確かに、3D空間やアバターでの行動、ほかの人との交流などは似ています。
でも大きな違いは次のとおりです。
- ゲーム: 開発者が作ったルールや目的(例:敵を倒す、ポイントを集める)があり、みんなはその世界で遊ぶ立場。
- メタバース: ユーザー同士が世界を作り変えていく。ルールは固定されていない部分が多く、イベントを開く・新たなコンテンツを作るなど、自分たちで成長させる。
言い換えれば、メタバースは「使う人たちが主役になって世界を形作っていく場所」なのです。
5.なぜメタバースが注目されているの?
5-1. 世界的企業がどんどん参入中
Facebook(現Meta)をはじめ、GoogleやMicrosoftなど大手IT企業が次々とメタバースに投資したり、サービスを発表しています。
5-2. 技術の進歩がどんどん進んでいる
VR/AR(仮想・拡張現実)や高速通信(5G/6G)が発達すると、より快適に大人数で3D空間を使えるようになります。将来的には、本当に「現実と変わらない」レベルに近づくかもしれません
6.メタバースを支える技術
メタバースの世界を作るためには、いろいろなIT技術が必要です。ここでは、「メタバースクリエイター」を目指す人が知っておくと役立つポイントを簡単にまとめました。
6-1. 3D空間をつくる「ゲームエンジン」
- 代表的なエンジン: UnityやUnreal Engineなど
- 何ができるの?
- 3Dモデルを置いて、キャラクターや建物、アイテムなどを配置
- 明かりや動き、音などをプログラミングして、リアルに動く世界を表現
- クリエイター視点で大事なこと
- 「どんな世界観にするか?」を考えながら、オブジェクトの配置やスクリプト(プログラム)を工夫する
6-2. みんなで同時につながる「ネットワーク技術」
- リアルタイム通信がポイント
- たくさんの人が一緒に遊んだり作業したりできるように、通信が遅れない工夫が必要
- 大規模イベントやコンサートをする場合は、サーバーを複数使って負荷を分けたりする
- クリエイター視点で大事なこと
- 「みんなで見ている景色は同じ?」「ラグ(遅れ)はない?」など、スムーズな体験を意識して設計する
6-3. キャラクターや世界をリアルに見せる「3Dグラフィックス」
- 3Dモデルとレンダリング
- 3Dモデル(キャラクターや建物)を作るために、Blenderなどのツールを使う
- ゲームエンジンが自動でレンダリング(映像化)してくれるけど、モデルの形やテクスチャ(表面の絵柄)が綺麗かどうかで印象が変わる
- クリエイター視点で大事なこと
- キャラクターの動きや表情、背景の作り込みなど、細かい部分まで工夫して世界観をアップさせる
6-4. VR/AR機器で体感を深める
- VRヘッドセット
- 目の前をゴーグルで覆い、視界を完全にバーチャル空間に変える
- ハンドコントローラーで手の動きも再現できる
- AR(拡張現実)デバイス
- スマホのカメラやARグラスで、現実の景色にキャラクターやアイテムを重ねて表示
- クリエイター視点で大事なこと
- VRなら「没入感(ぼつにゅうかん)」、ARなら「リアルの世界との融合」というように、使う機器の特性に合わせた体験を考える
6-5. データをたくさん扱う「クラウド」と「サーバー」
- みんなのログインやアイテム情報を管理
- たくさんのデータを安全に保管し、世界を維持するためにクラウドサービス(AWS、Azureなど)を使うことが多い
- クリエイター視点で大事なこと
- 作った世界を公開したいとき、どのくらいの人数が一度に入るのか想定して、サーバーの設定を決める
6-6. AIがサポートする未来
- アバターやNPCの動きの自動化
- AIがキャラクターの行動パターンを作り、ユーザーとの会話もする時代に
- レコメンド機能(おすすめ表示)
- たくさんのワールドがあるとき、自分に合った世界やアイテムを紹介してくれる
- クリエイター視点で大事なこと
- AIツールを活用すれば、細かい作業やテストを自動化して、より独自のアイデアに集中できる
メタバース工学科では特に、3D空間をつくる「ゲームエンジン」やキャラクターや世界をリアルに見せる「3Dグラフィックス」を学びます。
7.メタバースの可能性
メタバースが普及すると、みなさんの学校生活や将来の働き方も大きく変わるかもしれません。
- 遠くの人とも気軽に会える
- 地理的な距離を超えて、海外の友達とも一緒にイベントを楽しんだり共同作業が可能
- アバターでの表現が豊かに
- 容姿や年齢に縛られず、新しい自己表現やコミュニケーションができる
- クリエイターになれる
- 3D空間でステージを作ったり、自作のキャラクターを販売したりして、学生のうちからビジネスを体験できるかもしれない
- 3D技術を使う「メタバース人材」の需要UP
- 3Dモデリングやプログラミング、デザインスキルを持つ人が将来さらに活躍できる
8.実際にメタバースを体験してみよう!
「メタバースに興味はあるけど、VRゴーグルなんて持ってない…」という人も大丈夫。スマートフォンやPCで始められるサービスがあります。
8-1. Roblox(ロブロックス)
- 世界中のユーザーが作ったゲームや空間で遊べる。自分でゲームを作ることもでき、プログラミングの勉強にもなる。
8-2. Fortnite(フォートナイト)
- バトルロイヤルゲームで有名だが、ライブイベントやコンサートも行われており、メタバース的な広がりを見せている。
8-3. VRChat
- PCだけでも参加可能。VR機器があればよりリアルな3D世界に入れる。アバターやワールドを自作するユーザーが多いのも特徴。
8-4. cluster(クラスター)
- 日本発のメタバースプラットフォーム。スマホ、PC、VR機器など、いろいろな端末から参加できる。
- 誰でも無料でワールドを作れて、大人数で同時にイベントが開ける。学校の文化祭や部活の発表で使ってみるのも面白いかも!
9.メタバースを安全に楽しむために
メタバースはあくまでインターネット上の世界。リアルな生活と同じように、安全とマナーをしっかり意識しましょう。
- 個人情報を守る
- 住所や本名、連絡先などを安易に教えない
- 誹謗中傷や差別はしない
- 画面の向こうには本物の人がいる。言葉遣いや態度に気をつける
- 利用時間をコントロールする
- 熱中しすぎて勉強や体調に影響が出ないように注意
- 困ったときは大人に相談
- トラブルに巻き込まれたり、不安を感じたりしたら、親や先生、友達に相談してみよう
10.まとめ
メタバースはただの流行ではなく、これからの社会や働き方、コミュニケーションの形を大きく変える可能性を持っています。
- まだ理想のメタバースは完成していないけれど、今あるプラットフォームでも十分に楽しめる
- 「自分が作り手になる」のがメタバース最大の魅力
- 安全に気をつけつつ、まずは体験してみるのが一番
中学生・高校生のみなさんも、興味があればスマホやPCから気軽に「仮想空間デビュー」してみませんか? 新しい世界が広がること間違いなしですよ。
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